中国のネクストワンとして、最近ベトナムへの関心が製造企業の間で高まっている。その理由とハノイを中心とするベトナム北部の近況をレポートします。
■ 社会主義経済から市場経済体制への転換
2007年にベトナムは、念願のWTO(世界貿易機構)へ150番目の加盟国として認められた。WTOは加盟国相互間の貿易と企業活動を自由化する協定で、すべての加盟国の企業活動の自由を認めることで、自国企業の加盟国での経済活動の自由が保障される協定である。従来の社会主義経済体制では、企業の進出は国家の認可が必要であり、活動についても大きな制限が設けられてきた。この経済体制の転換はベトナムの市場開放と外資企業の自由な活動を新たに認めるものので、最近のベトナムブームの大きな要因となっている。
■ WTO加盟による経済制度の整備状況
WTO加盟は、ベトナムの従来の経済制度を大きく変える必要がある。そのために企業投資法、会社法、企業所得税法、労働法など07年から08年にかけて新法の制定、或いは大幅な改正が行なわれた。これらの法律は、中国、タイなどの法改正を参考にしている。
何れも、社会主義経済下から市場経済制度への転換に即したものです。しかし、ベトナムの場合には法律が現場サイドで機能するには時間を要し、混乱期にあり1~2年程度は法律が機能するには時を要すると思われる。
■ ベトナムの経済基盤
ベトナムは農業国で、労働就業率は約80%が第一次産業であり、その大部分は農業従事者となっている。それは長い間、社会主義にこだわり、外資企業の進出が遅れ、産業が発展しなかったことによる。このために産業の発展に必要な素材産業が絶対的に不足し、輸入に頼らざるを得ない状況にある。これまでは産油国でありながら石油の精製所がなく、昨年初めて唯一の精油所が稼働した状況である。製鉄所も昨年に初めて計画された状態である。
しかし、AFTA(アセアン自由貿易地域協定)の進行により、当面はタイ、シンガポールなど産業の発展した地域からの調達が活発化すると思われる。更に中国からの調達も可能となっている。
■ ASEAN・中国との物流ネットワークの整備
ベトナムの二大都市ハノイとホーチミンからタイのバンコックへの東西回廊と、南部回廊が開通しベトナムからタイ、マレーシア、シンガポールへの陸送が動き出した。更に、中国は広東省の広州からベトナム国境の友誼関を結ぶ高速道路の建設を急ピッチで進めている。その他中国雲南省の昆明からラオス、タイ、マレーシア、シンガポールに至る南北回廊の開通に力を注いでいる。
これにより、中国とASEANの物流が構築され、中国南部とベトナムからミャンマーのモラミャンに陸送により運び、そこから欧州、インドへへの船舶輸送ルートが完成する。これはFTAを見越したボーダーレスの物流ネットワークが整備することによるこの地域の経済発展を目指している。
日本の日通、日本郵船も中国、ASEANの大きなビジネスチャンスを求めて、積極的に参入している。私の予想では2015年までにはこの地域内での部材の調達、海外への製品輸出において大きな発展に寄与することが見込まれている。
■ ベトナムの優位性
ベトナムが注目されている理由に、労働者の資質、低コスト、政治的安定が述べられるが、実際はこれ以上に立地条件の優位性にある。将来、中国とASEANの経済の一体化は確実な情勢にあり、この中間点に位置するのがベトナムである。部材の調達、市場への配送などすべての面で優位にある。
■ ベトナムの経済力
ベトナムは海外輸出を目指した製造業の優位性は認めるが、市場としてのベトナムはまだまだと思われる。いずれ、産業の発展が所得の向上をもたらし、市場規模は向上することは確実であるが、それには3~5年はかかると思われる。そして、地域全体の発展は更に長い年月が必要である。
■ 進出地の検討
ベトナムはハノイを中心とする北部、ダナンを中心とする中部、ホーチミンを中心とする南部に別れる。ハノイからホーチミンまでは1,400㎞に及びバンコックの方が近い。経済力は南部ホーチミンが圧倒的に強い、がしかし政府は北部の発展に力を注いでいる。進出については、中国との関係では北部であり、ASEANとの関係では南部となる。両方の関係からは中部となる。
最近は、タイと中国を見据えた戦略により中部のダナンも注目されている。
■ 日本の大手製造業の海外シフト
日本の大手企業は、技術力では優位にあるが、価格競争力で韓国、台湾、中国企業に苦戦している。特に最近の円高は収益力を劣化させ、経営戦略の見直しに迫られている。そのために生産の海外シフトは避けられない。大手の製品製造業の海外シフトは国内の中小企業の縮小に及び中小企業でも海外進出は生存を賭けたテーマになっている。
経済のグローバル化は、日本、米国などの先進国に有利になるとの予測のもとに、これらの国が推進してきた。しかし、結果として米国、イギリスの製造業で明らかなとおり、必ずしも有利ではないことが明確になっている。低コスト国の技術力は必ず向上し、価格競争力に優る製品を供給する企業が市場で勝利する。そして企業側では市場価格をコントロールが不能になる。その意味で、価格競争力を維持するためにも中国、ASEANは日本製造企業が取り組まなければならないテーマとなっている。
ハノイ旧市街入口
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